大ヒットアニメ「君の名は」を見る(感想)

君の名は YOUR NAME
2016年 日本 公開:東宝 107分 アニメーション
監督・脚本:新海誠
声の出演:宮水三葉上白石萌音)、一葉(市原悦子)、宮水四葉谷花音)、宮水トシキ(てらそままさき)、宮水二葉(大原さやか)、勅使河原克彦成田凌)、名取早耶香悠木碧)、勅使河原の父(茶風林
立花瀧神木隆之介)、奥寺ミキ長澤まさみ)、藤井司島崎信長)、高木真太(石川界人)、瀧の父(井上和彦

★ネタバレあります!!★

世間で評判になって大ヒットしているので見に行こうかと思っては、予告編を見てその気が萎えるという手順を何度も繰り返してきた。巨大クレーターが連想させる「世界を救う」話にも、魂入れ替わりとタイムスリップという昨今のテレビドラマの2大使い古しネタにも、高校生が主役のドラマにも、もうほとほと飽いているし、アニメならではのちょっとためてからの表情描写とかふわっと風が吹く感じとか、クライマックスの掛合い的な叫び合いとか、なんかどうもノレないと思っていたのだが、ついに見にいく。
私としてはまあ気恥ずかしいところがあるが(せっかくの、最大の見せ場のひとつとも言える三葉と瀧の初めての出会いの場面でのあのやりとりは私には気恥ずかしすぎて見ていられなかった)、危惧していた押しつけがましさや甘ったるさはさほど感じられず、きちんとした物語を、きれいな画面で丁寧に見せてくれる良作だった。最近は何かというとすぐ安易にタイムスリップするドラマが多すぎてちょっと辟易していたのだが、時間ネタSF好きとしてよくできたものを見られたということもあると思う。映画について四の五の言うのは、ほんとに、見てからにしないといけないと反省しました。
魂の入れ替わりの描き方は抑え気味で、時間のずれについては伏線や小道具がよく利いている。組紐を作りながら一葉が語る世の中の「綾」の話、代々繰り返されてきた入れ替わりの夢の話、現代っ子ならドン引きしそうな作り方をするお神酒の口噛み酒、何度も何度も三葉の髪を束ねる組紐、二人が初めて出会う「かわたれどき(彼は誰時)」、そして「糸守」という地名など、いろいろな細部が見事に組み合わさって、まさに「綾」を成す。頻繁に出てくる引き戸の真横のカットは、アニメならではのアングルとも言えて、珍しい。(異世界への出入口などどいう解釈もあるようだが、私としては珍しいものを見たというにとどめておきます。) 
時間を隔てた恋は、マシスンの時間ネタ小説「ある日どこかで」などを思い出させるが、時間的に「ある日どこかで」ほど離れていないので、再会可能なのがよく、自分を知らない滝に会う三葉の思いもほどよく切ない。
変電所の爆破、防災無線ジャックという、高校生らによる必死の避難作戦は、せっかくなので、もうちょっと活劇的に盛り上がってほしかった気がする。いろいろ練ったのだろうが、町長に大事を告げるところで終わるのは何とももったいないように思った。