言葉の力

ゆとり教育に替わって、文部科学省が打ち出した教育方針は、「言葉の力」。
論理的思考とそれを言葉で表現する力を養い、社会との対話をはかっていくことを重視するという。最近ちまたで騒がれる学力低下問題の発端となったPISA(生徒の国際学習到達度調査)において、日本の子どもたちが国語の記述式問題を苦手とするという結果が出たことが、その根拠のひとつになっているらしい。
娘の小学校の授業を見にいくと、「伝え」たり「発表」したりすることがやたら多い。行事や体験学習のあとは必ずといっていいほど「新聞」を書かされているし、総合をはじめ社会や国語でも個人またはグループに分かれて調べたことを発表する発表会が何度となく開かれている。つまり、他者への働きかけ、コミュニケーションの重視は今も行われていると言える。
だが、そこでいつも気になるのは発表する中身のうすさだ。中には、パワーポイントなどを用いてかなりきちんとした内容を発表する子たちもいるが、大概は、発表すること自体に気をとられすぎて中身を詰める時間がほとんどないように思われる。それでも体験学習は見てきたことを直後に書くので体験の様子とか感じたことが率直に述べられているが(パンフレット丸写しというものもあるが)、テーマに沿った調べものなどは、インターネットで検索して上の方にあった記事をそのままま写したり、下手するとプリントアウトを貼っただけだったりで、発表の際に自分の原稿の字が読めなかったりする。簡単な言い回しで充分だから自分の言葉で伝えるべきだといつも思う。先生は、とにかく全員が発表にこぎつけるようにすることが第一で、それぞれの発表の中身についてはほとんどフォローできていないないように思える。
まず言いたいことがあってそれを伝えるのが言葉のはず。言葉で表現し、他者に伝えるためには、まず自分が理解しなければならないし、あまりに中身のうすいことを伝えても大した実にはならない。「言葉の力」という新方針でもって、そのへんのことをきちんとしていければいいんだけど。